歯周病予防は糖尿病予防♪

こんにちは、Dキャリアプラス 代表の歯科衛生士の城です。

日本糖尿病学会の「糖尿病ガイドライン」2019年の改訂版には「歯周病の治療が血糖コントロールの改善に有効であり、歯周病の治療を強く推奨する」と掲載されました。

30歳以上の成人の約80%がかかっていると言われる歯周病。

歯周病を予防・治療することは全身の健康に多く影響してきます。

今回は歯周病と全身疾患の関係性、企業で歯科健診を行うことのメリットについてお話しいたします。

歯周病とは

歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患のことで、歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。

口腔内に多くの細菌が停滞し歯肉の辺縁が炎症を起こして赤くなったり、腫れたりします。痛みなどの症状はないため”サイレントキラー”とも呼ばれています。

歯周病が進行すると、膿が出て、歯が動揺し、最終的には歯を抜かなければならなくなってしまいます。
歯ぐきの内側の潰瘍状態は、歯周病菌が存在する限り続きます。そして、炎症性のサイトカインという悪玉ホルモンは、血流にのって全身を駆け巡り、インスリンの作用を妨害して血糖値を上昇させてしまいます。

歯周病と糖尿病

歯周病は細菌が原因で、歯ぐきの内側に歯周病菌が入り込み、歯ぐきを破壊しながら進行する「炎症」です。
「炎症」状態の歯周ポケットからは、炎症に関連した化学物質が血管を経由して体中に流れていきます。
炎症関連の化学物質は、体のなかで血糖値を下げるインスリンを効きにくくします。そのため、糖尿病が発症・進行しやすくなります。

歯周病が悪化すると、血糖値が上がり、歯周病が改善して歯ぐきの炎症が消えると糖尿病も改善していくことが証明されています。

糖尿病の合併症のひとつに歯周病が入っています。また、歯周病や糖尿病は発熱などの症状がでないため、治療開始が遅れ、気づいた時にはかなり進行している場合が多いです。

糖尿病は突然発症するわけではありません。

過食と運動不足を5年~10年と続けていると、次第に血糖値が上がり、体重が人生最大に到達する頃にようやく糖尿病と診断されます。

また、メタボリックシンドロームの方が、歯周病を放置していると、合併症の一つである動脈硬化の進行を促してしまいます。

歯ぐきの炎症がなくなれば、糖尿病予備軍の方々や、すべての世代の日本人が高血糖という災いから難を免れることができますが、自分で歯ぐきの炎症を見つけることはとても難しいことです。

前述しましたが、歯周病は“サイレントキラー”とも呼ばれ、静かに痛みなく進行していきます。

歯周病の治療で血糖が改善される可能性

糖尿病の9割を占める2型糖尿病の患者さんが、歯周病を併発している時、歯周病の治療を行えば、血糖値(HbA1c)が改善する可能性があることが発表されました。

様々な研究により、歯周病の治療で糖尿病患者の血糖値(HbA1c)の値を0.4%~0.7%低下させることが分かっていますが、この血糖値の低下は「糖尿病の内服薬1剤に匹敵」します。歯科に通って歯周病の治療を行えば、お薬が減るかもしれません。

日本糖尿病協会が作成して無料配布している「糖尿病連携手帳第4版(2020年改訂)」の歯周病の説明欄には「歯周病の改善によって糖尿病の改善にもつながるとの報告があります」という説明文も記載されています。

働く世代が定期的に歯科健診をうける必要性

歯周病にかかっていないかを定期的に検査してもらうことにより、歯周病の予防と治療を行うことが、健康なからだを維持することにつながります。

ところで、企業における歯科健診の重要性をご存知でしょうか。

企業(事業者)には安全配慮義務があり、労働者に必ず健康診断を実施しなくてはいけません。
しかし、歯牙酸蝕症健診の対象企業(事業所)は除き、企業における歯科健診は任意であり、実施している企業(事業所)は決して多いとは言えません。
企業で歯科健診を実施することのメリットは「むし歯や歯周病の予防や早期発見・治療」「全身疾患へのリスク軽減」「治療期間短縮」「医療費抑制」です。

最近では「国民皆歯科健診」も話題となっており、今後、歯科健診が企業健診の必須項目になるのではという考えもあります。

メリットの多い企業歯科健診。従業員さまの健康のため、歯科健診の導入をご検討してみてはいかがでしょうか。